作業服に主力を置く会社
「積極的によい仕事を探して転職したい」6・5%。
「自分で独立・開業したい」6・2%。
「一度会社勤めをやめて、その後再就職したい」3・2%。
これらを合計すると、54・9%の回答者がチャンスがあれば、今の会社を飛び出して自分の道を探ろうと考えている。
この他に「会社が勧めるなら子会社・関係会社に転職したい」が6・5%ある。
年代層別にみると、30歳代では「よい仕事があれば転職したい」が47・0%に達する。
20代も43・3%に上る。
「定年まで勤めたい」はやはり50代が47・0%、40代が31・2%と年齢が高くなるほど多くなる。
しかし「よい仕事があれば」は40代で30・0%、50代でも23・2%いる。
だがサラリーマンの誰もが、積極的な姿勢で会社離れを起こしているわけではない。
会社から退職勧奨を突然受けた場合、動揺する人の方が実際には多いようである。
雇用調整ホットラインなどで解雇問題などの相談を受けている日本労働弁護団の幹事長、U弁護士は「労働法では勝手な解一雇はできませんから、不当な退職の強要には勇気を持って立ち向かえば、退けられるんです。しかし相談に来ても90%の人は泣き寝入りです」と語る。
「私はけじめをきちんとつけるべきではないかと言うのですが、なかなか踏み切れないようですね」。
有効求人倍率の低下に見られるように、再就職の環境が厳しくても、割り切れぬ気持ちのまま退職を受け入れてしまうのはなぜだろうか。
「長いものには巻かれろということもあるでしょうが、再就職に悪影響が及ばないように気をつかうんです。
自分で自分を守らなければならないですからね。前の会社で争って辞めたとなると、再就職が難しくなるのではと心配するんです。50歳を超えると、企業社会をよく知っていますから。つまり企業がいかに強いかをね。ですから、それを飛び越えるのは実際には難しいのです」。
U弁護士によると、会社側も悪のりしてかなり強引に退職を迫っていることを自覚しているケースが多いため、本人が裁判も辞さずという姿勢で不当な点を突くと、会社側があっさり退職勧奨を引っ込める場合がほとんどだという。
しかし泣き寝入りは弁護士に相談しても9割に上るわけだ。
企業にとって人件費削減のために退職を強要するのは、やり得なのだろうか。
時折、企業の雇用調整のやり方を批判する手紙が舞い込む。
今回の不況では、企業内の空気はバラバラである。
日本軽金属のある管理職が、石油ショック後のアルミ精錬の大撤退のころの経験に照らして、こう言っている。
「あの頃は、本当に厳しかったですよ。
工場でみんなで顔を合わすと、どうやって食って行こうかという話をしたものです。
しかし石油ショックという予想外の事態が襲ってきたわけですから、上から下まで力を合わせて行こうという一体感はありましたね。
しかし最近の企業を見ていると、経営責任を追及したいという気持ちが下の方には強いのではないですか」アルミ精錬業は電力料金の高騰と円高により、Nの一工場を残して、事実上、全滅した産業である。
各社は圧延などの加工業に重心を移して生き残りをはかったが、実に凄惨な撤退劇が演じられた。
アルミ精錬に賭けた技術者は全く職場を失った。
人生が本当に狂ってしまった人も少なくなかった。
しかしそれでも、全部がそうだったとは言えないけれど、「会社のためだから仕方がない」と自分を納得させて退職して行った従業員がいたのである.しかし今度はそうは行かないだろう。
時代は全く変わり、不況の原因も違う。
今、従業員に自分を殺して身を退くなどということを期待するとしたら、完全な時代錯誤だ。
バブルに踊ったトップ層の行状を、下の方は冷ややかに見ている。
未だに景気の回復を頼むばかりで、後はコスト削減の単純な引き算の経営しかできない経営者に不信感を募らせている。
経営者は、社内の本音をつかみかねているのかもしれない。
従業員は何を考えているのか、経営者は本当は従業員を恐れているのではないか。
いや、少しは恐れた方がいいだろう。
無神経な一雇用調整が、従業員の帰属意識を切り崩し、浮き石化をますます助長する。
経済広報センターのアンケート調査は、想像以上に自立したサラリーマン像を浮き彫りにしている。
「雇用」のあり方については、「契約による一雇用」を選ぶ人が41・4%に上り、「終身雇用」の33・5%を上回る。
「出世」に対しては、「コース別選択キャリアプラン」がいいという答が72・7%を占め、「終身出世競争」は9・4%にすぎない。
「序列」は、「能力序列」を選ぶものが63・6%、「年功序列」は9・2%と人気がない。
「労働観」についても、際立った特徴がある。
「個人・家庭優先の労働観」が59・6%を占め、「会社優先の労働観」は8・4%に留まる。
「どちらともいえない」と迷う層が31・5%いるが、傾向ははっきり出ているようだ。
会社べったりは後退し、自分を主張しようとする、これまでとは違うサラリーマン像が浮かび上がる。
「働きたい企業」の条件も、「自分の適性をいかせる仕事ができる」46・3%、「自分自身が成長できる」45・4%、「上司と部下の間でも、自由闇達にものが言える」41・9%がベストスリー回答。
あまりに答が一つの文脈できれいにそろっているので、少々不思議な気持ちすでに40歳代半ばを超えている人たちは、こうありたいと思っても、すでに様々なしがらみがあり、実際の行動に移すのはなかなか難しいかもしれない。
しかし遅まきながら、会社に無意識のうちに依存してきた我が甘さに気づき、したたかに生きようとしているのではないか。
中堅、若手のかなりの部分と中高年の積極的な一部は、「自分への投資」を中心にすえて動きだしているものとみられる。
こうした変化は不可逆的であって、21世紀に「会社人間」という言葉が果たして残っているかどうか。
従業員側からの一方的献身は影を潜めた。
もっとも今までも会社勤めはボランティアではない。
献身といっても、何の見返りも求めない自己犠牲はまずあり得なかった。
会社にどっぷりつかることで、昇進できたり昇給が期待されたり、それ相応のリターンがあった。
だからこそ、普通の従業員まで長時間残業も厭わず仕事をしたのだ。
残業代は生活費の一部に組み込まれているから、これも単なる忠誠心によるものではない。
献身競争をしても得られるものが少ないとわかれば、しんどいだけの「終身出世競争」を選ばなくなるのはごく自然である。
普通の人間はいつだって、自分を中心に考えるものだ。
昔も今も変わらない。
変わったのは、何が自分にとって得かという選択の中身である。
それはすでに変わってきているし、これからますますそのピッチを速めていくに違いない。
いつまでも従順な従業員がいると、経営者が思い込んでいたら判断を誤るだろう。
これまで従業員も労働組合もおとなしかったから、企業は、従業員をきちんと見てこなかったのではないか。
今や世界一の高賃金の労働者を持て余して、中高年者を余計者のように扱っているが、これは人材のムダ遣いをしてきた結果であり、そのつけが回ってきたのに過ぎない。
現在、一人雇用すると、生涯に2億8千2百29万円(日本生産性本部92年7月調べ、大卒60歳定年生涯賃金)を支払うことになる。
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